新規公開株式の株価と企業価値 : IPOバブルと初値の妥当性
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概要
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新規公開株式について観察されている3つのパズルのうち,公募価格の過小評価の問題と中長期的な低収益率の問題は,公募価格や公開3〜5年後の株価と比べて,初値が相対的に高いことに起因している.そこで,公開時点での理論的企業価値を残余利益モデルに基づいて算出し,公募価格,初値と比較することで,初値の過大評価が存在する可能性を検討した.また,複数の株主資本コストと成長率を仮定し,理論的企業価値の推定の際の困難さを克服しようとした.その結果,1999年と2000年に新規株式公開を行った企業を対象とした分析では,公募価格が初値から有意に乖離していることが観察された.また,この現象は一般にIPOバブルと呼ばれる1999年に新規株式公開した企業のみをサンプルとした分析において顕著であった.一方,2000年に新規株式公開した企業のみを対象とした場合には,初値が理論的企業価値から乖離しているという状態は観察されるものの,統計的な有意性は非常に弱い結果となった.
- 2005-03-31