わが国法人中小企業の会計情報システムに関する実証的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文の研究目的は,わが国法人中小企業(以下,「企業」という)の会計実務の特性を明らかにすることである.現実的には,企業の会計実務が調査対象となる.しかし,わが国には約230万の企業が存在し,このような多数の企業を対象として標本抽出を行って直接に調査することは極めて困難である.したがって,他の方法によって企業の会計実務を観察する必要がある.そこで,本研究では,業務用会計システムのシェアの大部分を占めていると思われる業務用会計システムの主要コンピューターサービス会社(以下,「CS会社」という)5社と関東近辺の400の会計事務所を選定し実証的研究を行った.この研究の結果,わが国の法人中小企業の会計実務の実態を「会計システムの設計,構築(導入),および運用」という観点からとらえると,少数の「CS会社」が会計事務所用の業務用会計システムを設計し,これを大部分の「会計事務所」が構築・運用し,ほとんどすべての「法人中小企業」がこれを利用しているという3層構造が成り立っているという「3層構造の仮説」が示される.この仮説を一般命題として設定し,これを前提として,以下のような,個別命題としての個々の仮説を示すことができる.会計事務所で使用される業務用会計システムには汎用性があるので,会計事務所は個別の企業の特殊事情を考慮した業務用会計システムを特別注文することはない(仮説1).その結果,業務用会計システムの種類は比較的限定されたものとなり,5つのタイプに分類できる(仮説2).さらに,業務用会計システムには,入力作業,出力書類の作成過程,質および量の点において,各社それぞれ特性がある(仮説3).「企業」,「会計事務所」および「CS会社」の3層構造が存在することを考慮すると,このような業務用会計システムの特性,制約および問題点等は,企業の会計実務に大きく影響を与えていることが分かる(仮説4).個別命題である仮説1から仮説4は一般命題である3層構造の仮説を支持する根拠となる.特に企業の自計化の進展状況について述べると,相対的に企業の従業員規模数が小さい企業においては,企業は取引の基礎データのみを作成し,会計事務所はそれらの基礎データにもとづいて決算書等の作成などを行っている所が多く,企業の従業員規模数が大きい企業では,企業は自ら決算書等を作成し,会計事務所は経営や税務に関する専門的な助言を行っている所が多いことが示される.(仮説5)
- 日本管理会計学会の論文
- 2000-03-31
著者
関連論文
- レバレッジド・リース取引測定のフレームワーク
- セール・アンド・リースバック取引の測定方法について
- わが国法人中小企業の会計情報システムに関する実証的研究
- レバレッジド・リース取引の測定方法について : FASB No.13の4方法に関連して