半導体ビジネスの収益構造と採算管理システム : DRAMなどの半導体汎用製品を中心として
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概要
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半導体産業は,典型的な装置産業であり,営業リスクの大きな収益構造を持つ.したがって,採算管理システムは,製品の販売価格と価格弾力性,生産数量と生産工程のキャパシティ制約,長期的には生産数量に応じて変化する活動能力費と設備投資コストなどの拘束能力費といった製品戦略要素を考慮しつつ,プロダクト・ミックスの決定,生産ラインへの生産数量の割り当て,新ラインの投入といった製品戦略の意思決定を的確に支援できなくてはならない.それには,半導体事業の成功要因に立脚した製品戦略要素を考慮しつつ,事業全体の収益構造の変化を的確に評価できることが必要条件となる.半導体産業の経営者・管理者は,製品の採算性を判断するための会計情報として製品原価を用いることの有用性に疑問を抱いている場合が少なくない.半導体の製品原価は,著しく大きな潜在需要と微細化技術のもたらすスケールメリットとの相乗効果によってダイナミックに低減する特徴を秘めている.したがって,どんなに緻密な方法を用いて製品の実際全部原価を計算したとしても,将来の収益性を判断するうえで有用な情報にはなり得ないのである.製品戦略の観点からは,将来にわたる収益構造のダイナミズムを把握することが重要であり,そのような目的に資する会計情報を整備することが望まれるのである.本研究は,このような問題意識のもとに,まず半導体事業の収益構造の分析を通じて,半導体製品原価がどのようなメカニズムで急激に低減するかを明らかにする.その上で,半導体事業の成功要因を設定し,それらに立脚した製品戦略の意思決定を支援する採算管理システムの考え方を提示する.本稿の採算管理システムは,短期および長期的な収益構造のダイナミズムを理解することによって,戦略代替案ごとの製品原価の予測と最適価格設定,長期的な利益を最大化するプロダクト・ミックスの選定と不採算製品の峻別,新製品ライン投資の経済性,といった半導体事業にとって戦略的に重要性の高い経営情報を提供するものである.
- 1998-03-20
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