本州北東部日本海側における絶滅危惧種ユビソヤナギ(Salix hukaoana)の分布・生育状況
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概要
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ユビソヤナギは北関東から東北地方にかけての大規模河川上流部に分布し山地河畔林を構成する高木性のヤナギである。自生地はこれまで非常に限られた地域からしか報告されておらず、絶滅危惧種に指定されている。近年、新自生地の発見が相次ぎ、ユビソヤナギの分布の全容が少しずつ明らかにされつつあるが、分布の可能性が示唆されていた東北地方日本海側の分布状況は不明であった。本研究では、東北地方の日本海側を中心にユビソヤナギの分布調査をおこない、自生状況を明らかにした。その結果、雄物川水系玉川流域(秋田県)、最上川水系立谷沢川流域および銅山川流域、赤川水系大鳥川流域、荒川水系荒川流域(山形県)の5箇所で分布を確認した。このうち、玉川流域、立谷沢川流域、銅山川流域の3箇所は本稿が初の報告となる。また、玉川流域は現在確認されている分布の北限となる。大鳥川流域はユビソヤナギの分布が延長19kmにわたり、東大鳥川ではユビソヤナギ林分が連続的に約8km出現する大規模な自生地であることが判明した。しかし、他の自生地はユビソヤナギ林分の分布範囲が約2〜3km以内の小規模なものであった。特に立谷沢川流域ではユビソヤナギが8個体しか確認できず、この地域個体群は絶滅寸前の状態にあった。これらの自生地の気候条件は暖かさの指数59.9〜87.8、寒候期の最深積雪217〜361cmとなり、これまで報告されてきた自生地よりも多雪地帯に偏っていた。また自生地は標高170〜640mに位置し、分布範囲のほとんどは河川上流部の、河床の平均傾斜度が2°から0.5°に減少する区間に限られた。今回の調査でユビソヤナギは東北地方の日本海側の多雪地域にも分布することが明らかになったが、地形的に限られた範囲でしか分布せず、自生地の多くが個体数が少ない小規模なものであるため、保護区指定を含めた保全策の検討が求められる。
- 2010-05-30
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