大規模構造物と環境収容力 : 人工構造物(大船渡湾湾口防波堤)が湾内に及ぼす影響(シンポジウム:増養殖漁場の海洋環境をめぐる諸問題)
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概要
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チリ地震津波(1960)を契機として大船渡湾湾口防波堤が建設された(1967).本研究では,湾口防波堤がカキ養殖や水質の変動に及ぼす影響について検討した.現在も主要な養殖対象種であるカキは筏垂下法で湾口防波堤建設以前から養殖が行われてきたが,カキ筏の台数に変化が少なかったものの,カキの1台当たりの生産量は湾口防波堤建設後の方が建設前に比べて大きく減少していた.水質の観測資料から,水温,溶存酸素,透明度は,湾口防波堤建設前後で,夏期の表層と底層の差が大きくなる傾向が見られた.このことから,湾口防波堤は湾内の海水流動の停滞をもたらし,これが密度成層化を進行させるものと考えられる.表層水の滞留時間の長期化は陸水からの栄養塩供給やそれに伴う植物プランクトンの増加と相まって有機物の沈殿量を増大させ,底層水の貧酸素化をもたらす.この貧酸素化に伴い,また一方で,海水流動停滞によるカキのろ過できる有機物量も減少することも手伝って,身入りが減少し,採算上,養殖水深が浅くなり,垂下期間も長期化して,筏1台当たりの生産量が低下したものと考えられた.
- 1994-08-31
著者
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