分類所得における包括的所得の構成 : 分類基準の多様性に関する考察
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概要
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本論文の目的は、わが国の所得税が建前上、総合所得税を採用しているにもかかわらず、実質的に分類されていることに着目し、所得が分類されてなお包括的な所得を構成するための分類基準について論じたものである。本論文では、現行制度における所得分類の考え方、所得分類と包括的所得概念、および分類基準の多様性と各種所得の連関について述べている。現行所得分類は、通説では、所得金額の計算技術上の要請および担税力に応じた課税の実現を図るために設けられたものであると説明されている。確かに端的に取引を抽出し、異なる計算方法を与えることにより、担税力の質的差異を実現していることは評価できる。しかしながら、そもそも所得は、正確に把握されているのかという実体論の不備と分類所得税から総合所得税へつなぐ手続論の不備があると指摘した。そこで、これらの問題点を踏まえて観念できる包括的所得について岡村説を取り上げて評価し、その上で、分類された所得は、多元的な分類基準によって切り取られているのではないかと考えた。包括的所得がどのような基準に基づいて分類されているかについて検討した結果、現行の分類所得の基準は、さまざまなそれを複合的に組み合わせた多元的な分類であるとした。ただし、どのような分類基準によっても雑所得は分類できず、所得の把握に限界が生じていることを述べている。
- 2010-01-29
著者
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