唐末の艶情詩について
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概要
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はじめに 中晩唐にかけて,艶情を主題あるいはモチーフとする詩作品が多量に作られるようになるのは周知の事実である。男女の間の情愛あるいは,情愛の対象として女性を詩歌に詠ずることは,中国の詩にあっても古い時代から重要な主題ではあった。ただ,多くは「棄婦」・「思婦」(棄捐されてなお相手を思慕する女性),あるいは「發於情,止乎禮義」(詩序)等の伝統的な枠組みの内で,概して抑制的に表出されていた。ところが中唐から晩唐の時期になると,堰がきれたように情愛のテーマが取り上げられ,詩歌に詠われるようになる。しかも,愛情を取り扱う詩の表現領域は大きく拡大されて,いささか猥雑露骨とも言える性愛情欲の描写をも内に取り込んでいくことになる。元稹,白居易,温庭筠 ,韓偓 などがその傾向の先進的な担い手である。もとよりそのような艶情詩を流行させるにいたる社会的文化的素因等の大きな問題をとりあげ考察する力量を持たない。いまはただ, 韓偓のいわゆる香奩集を中心に,唐末の「艶情」詩のモチーフについてのいささかの現象を詩の用語方面から考えてみたい。
- 2005-03-31