高塩類堆肥を用いた野菜栽培での土壌溶液組成および陽イオンバランスの経時変化(1) : ミニトマト栽培の場合
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概要
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近年,日本では畜産農家によるふん尿の野積みを制限する法律が施行された.その結果,塩分濃度,特にカリウムおよびナトリウム濃度の高い高塩類堆肥が生産されつつある.これらの堆肥は塩分濃度が高いため,野菜栽培における適切な高塩類堆肥施用量を判断するのは難しい.本研究では,土壌溶液の組成および陽イオンバランスの経時変化に注目し,高塩類堆肥を用いたミニトマト栽培を調査した.ミニトマトを化成肥料,普通堆肥,高塩類堆肥を用いて,褐色低地土(NBL)および黒ボク土(NA)でポット栽培すると,普通堆肥区では土壌溶液中の陽イオン濃度は低く推移していた.一方,高塩類堆肥施用量が増加するにつれ,土壌溶液中のイオン濃度は上昇し,ミニトマト栽培期間中,土壌溶液中のイオン濃度が高い状態で維持されていた.NAへの高塩類堆肥施用では,ミニトマト果実に尻腐れ果が発生した.尻腐れ果はCa欠乏によることが知られている.高塩類堆肥施用により土壌溶液中のカリウムやナトリウム濃度が劇的に上昇したことから,1価陽イオンに対するカルシウムイオンの相対的な割合がこの現象を引き起こす鍵になる要因だと考えられた.カリウムとナトリウムの活量比であるAR^<K+Na>を新たな指標として導入し,土壌溶液における陽イオン組成を定量的に評価できた.AR^<K+Na>を用いた解析から,一段目果実の形成開始時期にAR^<K+Na>値がある水準よりも低い場合に尻腐れ果が発生すると考えられた.高塩類堆肥施用量を20Mg ha^<-1>以下に減らしたNAにおける実験では,尻腐れ果は発生せず,果実の形成開始時期にはAR^<K+Na>値が尻腐れ果が発生した時よりも高かった.
- 2009-04-05
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