レブンアツモリソウ保護区に生育するカラフトアツモリソウの訪花昆虫相
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概要
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北海道礼文島のレブンアツモリソウ保護区内にはごく少数ながらカラフトアツモリソウ(ラン科)の開花株が生育している。その由来については両論があり、いまだ決着がついていない。仮にそれが人的に持ち込まれたものならば、絶滅危惧種レブンアツモリソウとの交雑によって生じる「遺伝的汚染」が問題となる。本研究ではカラフトアツモリソウの訪花昆虫相と昆虫分類群ごとの訪花頻度および訪花行動を明らかにすることで、種間交雑に寄与し得る花粉媒介昆虫の特定を試みた。また、調査結果をもとに、実際にどれくらい種間交雑が生じる可能性があるかについても考察した。2007年のカラフトアツモリソウの開花期には、鞘翅・双翅・鱗翅・膜翅の4目に属する25の昆虫分類群が花を訪れた。そのなかで訪花頻度が高く、唇弁サイズに適合した体サイズをもち、適切な訪花行動をしめしたコハナバチ科やヒメハナバチ科の"小型ハナバチ類"のみが花粉媒介昆虫とみなされた。その主要種はタカネコハナバチだった。小型ハナバチ類はレブンアツモリソウの花をめったに訪れず、またマルハナバチ媒花のレブンアツモリソウは通常、カラフトアツモリソウよりも大型の花を咲かせることから、小型ハナバチ類によってレブンアツモリソウの花粉が媒介される機会は非常にまれと推測される。また、体の大きなマルハナバチ類の女王バチによって小型ハナバチ媒花カラフトアツモリソウの花粉が媒介されることはあり得ない。これらのことから、礼文島ではカラフトアツモリソウとレブンアツモリソウとの間で種間交雑が生じる機会は皆無とはいえないが、決して多くはないと予想した。
- 日本生態学会の論文
- 2009-11-30
著者
-
高橋 英樹
北海道大学総合博物館
-
河原 孝行
森林総合研究所北海道支所
-
杉浦 直人
熊本大学大学院自然科学研究科
-
郷原 匡史
(資)マメコバチ研究所
-
高橋 英樹
The Hokkaido University Museum
-
Takahashi Hideki
Hokkaido Univ. Museum Sapporo Jpn
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