遷音速における薄翼上衝撃波のエルロン振動による非定常挙動について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
航空機のエルロン・バズは高速飛行において非常に危険な現象である。特に薄翼の航空機では、衝撃波による境界層はく離の発生が抑えられる結果、翼面での衝撃波振動自体がエルロン・バズの発生に直接結びつき、急速にエルロン振動が成長する。このようなエルロン・バズ現象に対する情報は薄翼航空機の存在が少ないため非常に少ない。一方、超音速旅客機の様な高速で飛行する航空機ではこのエルロン・バズの検討が必須となるため、将来の先進的高速航空機開発に対するデータ蓄積のため同エルロン・バズ現象の検討を行う必要がある。この必要性のもと、翼弦長の25%の長さのエルロンを持つNACA0003翼に対し、エルロンに強制的な振動を与えた場合の衝撃波の振動とエルロンに働くモーメントの関係について検討を進めた。本研究では、マッハ数、翼の迎角、及び、エルロン振動の振幅と振動数を変化させ、翼周りの流れに対するこれらの影響、及び、エルロンに働く非定常モーメントとの関係を、流体力学シミュレーション技術を用いて調べた。この結果、衝撃波が定常衝撃波位置に比べて上流側で振動する現象が見られ、これには粘性が強く影響していることが判明した。また、エルロン舵角を調和振動的に変化させても、衝撃波の位置は調和振動的にならないことが観察され、これには衝撃波前後の圧力比が調和振動的に変化しないことが影響していると考えられた。以上、エルロン・バズ発生に直接関係する衝撃波の運動は、単純な線形空気力学では扱えない要素を含んでいることが明らかとなった。
著者
-
玉山 雅人
宇宙航空研究開発機構 総合技術研究本部 総合技術研究本部 構造解析研究グループ
-
中道 二郎
宇宙航空研究開発機構 総合技術研究本部 構造解析研究グループ
-
玉山 雅人
宇宙航空研究開発機構 研究開発本部 構造・機構グループ
-
中道 二郎
宇宙航空研究開発機構
-
玉山 雅人
宇宙航空研究開発機構
関連論文
- 遷音速における薄翼上衝撃波のエルロン振動による非定常挙動について
- 超音速弾性模型を用いた遷音速フラッタ風洞試験
- 航技研遷音速フラッタ試験設備の新システム設計(第3部)計測系・他編
- 航技研遷音速フラッタ試験設備の新システム設計(1)機能編
- 抽気孔の配列位置による斜め衝撃波/乱流境界層干渉場の抑制効果
- 斜め衝撃波/乱流境界層の三次元干渉場の研究〜流れ構造と抽気位置の影響〜
- JAXAにおける航空技術開発と国産旅客機開発
- JAXAでの取り組み
- SSTアローウィング弾性模型の非定常圧力計測及び動的変位計測
- 斜め衝撃波/乱流境界層の3次元干渉場の研究--流れ構造と抽気位置の影響
- 遷音速域におけるエンジンナセル付き主翼形態のフラッタ風洞試験およびフラッタ解析(航空機研究の最前線)
- 世界の空力弾性事情瞥見 : 空力弾性および構造力学国際学会に出席して
- 小型超音速実験機半裁模型によるエルロンフラッタ実験と解析
- 宇宙航空研究開発機構での国産小型旅客機高性能化技術開発
- 小型超音速実験機全機フラッタ模型風洞試験について
- 小型超音速実験機全機フラッタ模型風洞試験について
- 小型超音速実験機半裁模型によるエルロンフラッタ実験と解析
- 小型超音速実験機半裁模型によるエルロンフラッタ実験と解析
- 一般社団法人日本航空宇宙学会第43期年会講演会開催報告と優秀講演賞受賞者の声(トピックス)