多発性骨髄腫における分子基盤に基づく治療層別化の可能性(特別講演I,第152回名古屋市立大学医学会例会)
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概要
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多発性骨髄腫は難治性の形質細胞性腫瘍であり長期の多段階発癌過程を経て発症する.最近の分子病態研究の進歩と新規分子標的薬剤の登場によって分子病型に基づいた治療法の開発が骨髄腫患者の予後改善に結びつく可能性が示唆されている.早期発症過程に重要な役割を担い病型を特徴付ける14q32転座により活性化される原癌遺伝子として,CCND,FGFR3/MMSET,largeMAFがある.後二者の発現陽性例はアルキル化剤やステロイド剤中心の化学療法では予後不良であるが,プロテアソーム阻害剤bortezomibや免疫調整剤であるlenalidomideを用いた臨床試験においては奏功割合や無増悪生存割合の改善が示唆されている.加えてFGFR3チロシンキナーゼ阻害剤などの特異的酵素阻害剤も開発中である.逆に骨髄腫の進展に関与する1q21増幅はthalidomide不応性と関連することも示されている.さらに薬剤の作用機序の面からは,腫瘍がNF-_KB依存性が高いほどbortezomibに感受性が高いことが示されている.新規薬剤を用いた臨床試験において,骨髄腫の分子病型が治療予測因子となりえるかどうかを前向きに検証し,治療層別化へ向けた準備を進める必要がある.
- 2008-07-01
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