将来に対する割引と林業経営における意思決定(自由論題論文,1994年秋季大会)
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概要
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割引率をゼロとした森林純収益最大のケースは,正の割引率を用いた土地純収益最大のケースよりも,造林投資が実行される可能性が大きくなり,最適輪伐期が長くなる。森林所有者の林業所得を長期的に最大化するのは森林純収益を最大にする経営方針であるが,経営者にとって林外所得の可能性を考えた総所得を長期的に最大化するのは純現在価値最大化あるいは土地純収益最大化の経営方針である。後者の場合,経営主体が直面している割引率を用いて造林等の投資評価をする必要がある。特に伐採後に再造林をすることが強制されている場合,造林から伐採までを1つのプロジェクトとして評価した場合には一般的な正の割引率を用いると不採算とされるケースでも,再造林をともなう伐採がされることがありうるが,このような林家の行動は必ずしも森林純収益説に基づくものだとは言えない。木材生産量および生産額については,一定の限度内で,割引率が高いケースの方が低いケースよりも永続的に大きくなる可能性がある。社会的割引率は経済成長率と関係しており,ゼロまたは低い割引率を支持する考え方の根底には経済成長に対する悲観的あるいは否定的な見方がある。
- 林業経済学会の論文