肺癌症例の予後に影響をおよぼす諸因子の検討 : 多変量解析における主成分分析応用のこころみ
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概要
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1)1958年より1968年の間に癌死をとげた当施設の原発性肺癌手術症例136例について,腺癌,扁平上皮癌,単純癌の三群に分け,これらの臨床諸検査成績,手術所見などから18項目をとりあげ,これらの18特性値を用いて主成分分析法により,肺癌の予後に影響をおよぼす諸因子にたいする分析を試みた。18項目の中の属性項目については,その各段階に等間隔の自然数を対応させ,変量についてはそのまま用いて粗データ行列を作り,さらに標準化されたデータ行列に変換し,これよ相関行列を求め,これから出発して主成分分析を行なった。各群とも18項目間の相関係数は低い傾向にあり,負の相関が多くえられた。2)主成分分析の結果,腺癌,扁平上皮癌とも第I主成分が比較的低く,約20%程度の寄与率を示し,第IX主成分まででほぼ80%の寄与率をえた。得られた主成分を検討した結果,腺癌では第I主成分が腫瘤と生体との臨床的相互関係を示し,第II主成分は,腫瘤と生体との生活歴を中心とした相互関係を示し,第III主成分は,発生部位を中心とする腫瘤の臨床的性状を示すと考えられる。扁平上皮癌の第I主成分は,腺癌の第III主成分の内容に,第II主成分は,腺癌の第I主成分の内容に,第III主成分は,腺癌の第II主成分の内容にほぼ相当すると考えられる。これらの内容の順位が,両者で異なるところに,各癌腫の病理形態学的,臨床的な特長が要約表現されている可能性があると思われる。
- 千葉大学の論文