ラット上丘の構造について(構造学的研究,<特集>脳と神経の研究VII)
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概要
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ラットの上丘のKluver-Barrera染色,Pal-carmine染色,Nissl染色,Golgi-Cox法燐タングステン酸変法,Bodian染色,Cajal第II法染色標本で細胞構築と樹状突起の広がり方について検索した。なお,Golgi-Cox標本でみると,上丘の細胞には種々のものがあって,それぞれ樹状突起の分岐状態,広がり方,分布範囲に特徴を示した。しかしながら,これらの細胞の配列状態は,大脳皮質,海馬などとは異なり規則性に乏しかった。そこで各切片から全く無作意に描写してきた多くの細胞を基にして,上丘内での元の存在位置を考慮に入れて模式図にまとめ各層の特徴をつかむことにした。1.a)第I層(str. zonale, str. griseum superficiale, str. opticum)中でstr. zonaleは最も細胞成分に乏しい。str. griseum superficialeには長軸を背腹方向にむけた楕円形の小形の胞体をもつ神経細胞が比較的目立った。str. opticumにも三角形の小形および多角形の中等大細胞など,かなりの数の神経細胞がみられた。b)Golgi-Cox標本で第I層をみた時に,最も特徴的な細胞は背腹方向に複雑に分岐した樹状突起を持っ小形ないし中等大のものであった。これらの細胞は第I層の中間部に多い。その他に,樹状突起を水平および矢状断方向,あるいは四方に伸ばした小形の細胞もみられたが,その数は少なかった。なお,深部には中等大の星形の胞体を持つ多極性細胞も認められた。2.a)第II層(str. griseum intermedium, str. album intermedium, str. griseum profundum)および第III層(str. album profundum)では胞体が40μ以上にも達する大形の多角形細胞が目立ち,こうした大形細胞の上丘内分布にはつぎのような特徴があった。すなわち,上丘前端からやや尾方の高さより上丘の中間1/3に出現しはじめ,後方の高さにいくにつれて腹外側に広く分布し,その数も増大していくが,下丘の前端が現われると大形細胞の数は減少していくのが解かった。b)Golgi-cox標本でみると第II,III層中には大形および中等大の多極性で樹状突起を周囲に長く伸ばした細胞が多く,その樹状突起表面には側棘はほとんど認められなかった。第III層中の多極性細胞の樹状突起には中脳中心灰白質にまで達するものがみられた。3.今回の観察から,第I層はRamon-Molinerのallodendriticなパターンをもち,第II,III層は脳幹網様体にみられるようなisodendriticなパターンのニューロンから構成されていることがわかった。こうした二重構造をもった上丘の機能的意義についても若干の検討を加えた。
- 千葉大学の論文