血と国-中国残留日本人孤児の肉親捜し
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概要
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本稿の課題は、中国残留日本人孤児の肉親捜しに焦点を当て、その歴史・社会的意義を考察することにある。残留孤児の肉親捜しにおいては、孤児の年齢という要素が決定的な分岐点となる。年長者は身元情報が豊富で肉親が判明しやすく、年少者は判明が困難である。また残留孤児の肉親捜しにおいて日本政府が果たした積極的役割は、きわめて限定的である。むしろ日本政府は、残留孤児の肉親捜しに様々な困難を生み出した。とりわけ日本政府が訪日調査の参加資格として、現実と乖離した高いハードル--具体的な手がかり・証拠の提出--を課したことは、身元情報が少ない年少の孤児の肉親捜しの取り組みを決定的に遅延させた。もともと身元情報が豊富な年長の孤児は、訪日調査を待つまでもなく、自主調査で肉親が判明していた。身元情報が乏しい孤児のために行われたはずの訪日調査の参加資格に、具体的な身元情報の提出を課すことは、大きな矛盾であった。さらに残留孤児の肉親捜しの動機は、血統主義的国民統合の論理ではなく、むしろ帝国主義やポストコロニアルの国民国家システムに対する批判であり、人間としての普遍主義でもあった。それはまた単なる自然本質主義でもなく、自然と社会の統一的把握においてのみ理解しうる生活の論理にほかならなかった。
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