中国国内地域間交易による地域格差拡大への影響に関する理論分析
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概要
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1990年代以後徐々に拡大してきた中国の地域格差を地域別の1人当たりGDPやエネルギー効率などの指標を用いて分析することができる.中国を東部地域(沿海地域)と内陸地域(中部地域と西部地域)に分けると,東部地域が優位であることが明らかになる.地域格差の拡大に様々な要因があると考えられるが,主として各地域の産業構造が異なっていることに主たる要因を求めることができる.したがって,中国の地域格差は地域間の構造的格差によるものでもある.要するに,東部地域は重化学工業化の産業構造を有しており,内陸地域の産業構造の根幹を成しているのが農業や軽工業などである.産業構造の格差は東部地域にとって有利な交易パターンの形成を助長した.したがって,東部地域は内陸地域に高付加価値製品を搬出し,低付加価値製品を搬入してきた.1990年代以後,このような交易関係から東部地域は膨大な経済利益を得ている.それがゆえに両地域間の地域格差は拡大した.このような交易関係の形成に「改革・開放」以後の重点政策が果たした役割は大きかった.中央政府は東部地域で「重点地域開発政策」と「重点産業開発政策」を実施することによって生産資源をそこに集中させ,多くの外資系企業の進出や国内産業資金の集中を促進した.したがって,東部地域の産業構造の高度化が実現し,東部と内陸部との間に以上のような交易関係も形成された.両地域間の産業構造の格差に基底を置くこのような交易関係は中国経済にとって欠かせない存在になっている.とりわけ西部地域からのエネルギー供給は上海など東部経済にとって成長維持の命綱となっている.では,このような地域間交易は如何にして地域格差の拡大に影響を及ぼしたのか.本稿の理論分析によれば,主な原因は東部地域における工業生産の集中⇒地域間「輸送費用」の上昇⇒東部地域生産集中の促進⇒地域間所得格差や賃金格差の発生である.また,東部地域での農工間労働移動についての制約も地域格差の拡大に影響している.
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