景気変動に対する財政反応の構造変化
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概要
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本論文は,わが国の国家財政を取り上げ,景気対策が実施されているのかどうかについて検討する.石油危機の時代には,国債の発行によって財源を確保し,大型の公共事業を実施するなど景気対策を行っていたことは明らかである.しかし,第2時石油危機の後,国債残高が増加するとそれを削減することを優先し,概算要求基準(シーリング方式)を定めた.この概算要求基準の導入により,当初予算では景気対策を行わなくなったことを,一元配置の手法を用いて明らかにする.しかし,一方では景気対策は必要なため,景気対策は概算要求基準の縛りのない補正予算で行った可能性がある.そのことを調べるために,新たに「補正率」という概念を定義し,それを用いて補正予算は概算要求基準の縛りを受けることはなかったことを一元配置の手法を用いて明らかにする.その上で,補正予算は景気の変動に対しどのような対応をとったのかについて相関分析を用いて明らかにする.特に,バブルが崩壊し,政治的に混乱した1991年度から1998年度にかけては,当初予算は景気の変動に対しプラスの相関係数で示されるように,同じ方向の反応を示したのに対し,補正予算は当初予算と反対の対応をとったことを示す.最後に,国債発行が,当初予算だけでなく補正予算でも大量に行われたため,国債発行の節度が損なわれたことについても明らかにする.