根粒形成制御における地上部と地下部のコミュニケーション(<特集>根系の水と養分吸収の生理生態)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
マメ科植物は、根に根粒菌との共生器官である「根粒」を形成することにより、根粒菌が固定した大気窒素を養分として受け取る事ができる。しかし、根粒の器官分化や窒素固定を支えるエネルギーの提供は植物側のコストとなり、過剰な根粒形成は植物の生育を妨げる。そこで植物は、「根粒形成抑制機構」を備え持つ事により、自身の生育や環境に見合った根粒数に止めて共生のバランスを保っている。中でも、一旦充分な数の根粒が形成されるとその後の新たな根粒形成が抑制される機構(根粒形成のオートレギュレーション)は、個体の根粒数に大きく影響する事が知られている。根粒形成抑制機構の研究は、抑制が働かない為に根粒数が著しく増加する「根粒過剰着生変異体」を中心に進められてきた。生理学的解析から、オートレギュレーションによる抑制が地下部と地上部間の遠距離シグナル伝達を介した全身的なものである事、抑制物質は地上部の中でも葉で作られる可能性が高い事、菌の分泌するNodファクターが根粒形成の開始と抑制の両方に関与する事等が示された。モデルマメ科植物ミヤコグサを用いた分子遺伝学的解析からは、地上部で機能する受容体型キナーゼHAR1が抑制に関与する因子として特定された。その他にも、地下部と地上部をつなぐ遠距離シグナル伝達に関与する因子についての研究が進められている。本稿では、これまでの知見に基づき、現在予想されている根粒形成のオートレギュレーションに関するモデルを紹介する。
- 日本生態学会の論文
- 2009-03-30
著者
関連論文
- ミヤコグサのゲノムと分子遺伝解析
- 根粒菌とマメ科植物の共生窒素固定
- 非マメ科植物に共生窒素固定系を賦与するための研究戦略と問題点 : 1. ミヤコグサを用いた共生窒素固定系の分子メカニズムの解読に向けて
- 手近な装置を用いた新しいAFLPシステムによるミヤコグサ(Lotus)L.japonicusとL.filicaulisの多型パターンの比較
- ミヤコグサのリソース整備と共生窒素固定の分子的解明
- 根粒形成制御における地上部と地下部のコミュニケーション(根系の水と養分吸収の生理生態)
- 高校教科書から飛び出たストーリー(no. 13)マメ科植物と根粒菌の共生を制御するメカニズム
- アーバスキュラー菌根以外の菌根
- アーバスキュラー菌根共生系から根粒共生系への進化