9. 1993年北海道南西沖地震における地域防災力の復旧・復興過程
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概要
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一般的に地域における防災力(防災に係る人員、施設、資金)の規模は、地域の人口や災害履歴、災害危険度等の要因によって規定されることが多く、大都市や災害危険区域に指定されている地域では防災力の規模が大きく災害対策のための地域相互間のネットワークも充実していると言える。その一方、離島や僻地においては概してその規模は小さく、限られた防災力の中で災害前・中・後における防災対策をせざるをえない状況にある。1993年7月12日に発生した北海道南西沖地震による地震動、津波、斜面崩壊および市街地火災によって、震源に最も近い奥尻島では、多くの尊い犠牲者と甚大な施設被害を被った。このため、奥尻島を管轄する奥尻町役場等の防災機関は被災直後から緊急・応急対応、そして復旧・復興対策と限られた防災力をフル動員してこの大災害に対処している。現在では、町の復興にむけて道や町に災害復興対策室が設けられ、市街地の復興にむけた計画の策定や調整が進んでいる。また、再来の可能性のある災害に対応するための応急活動体制や災害警報・情報伝達体制、避難対策、消防・危険物対策、警備体制、救援・救助活動など今回の災害を貴重な教訓として町の防災力はいかにあるべきかを、これら復旧・復興事業に盛り込もうとしているところである。筆者らは、防災力の規模が限られた地域における災害対策の強化や災害警報システムの拡充、早期避難対策の充実など次の災害に備えるための基本方針の立案に資するため、(1)防災機関の組織・施設の拡充・増強計画、(2)復旧地域計画における災害防止計画、(3)住宅再建に伴う防災的配慮(4)住民に対する防災教育・啓蒙など、地域防災力に関わる問題点が災害というインパクトによってどのように変化したかを継続的に明らかにし、最適な地域防災力のあり方についての基礎的資料を得ることを目的に現地調査を実施することにした。そこで、地域防災対策の中で中心的役割を果たさなければならない町が組織・管理し、火災をはじめとする各種災害対応における第一線の活動機関である消防機関に着目し、火災予防、警戒及び鎮圧並びに救急等の業務を行うための施設及び人員、組織、活動体制などに関する問題を通じて、地域防災力の向上方策について検討することとした。その結果、地域防災力に関する様々な課題を見い出し、地域防災力の向上にむけて、(1)孤立時における消防活動体制の樹立、(2)消防水利の整備、(3)情報通信設備の充実・情報連絡体制の確立、(4)消防団活動体制および防災市民組織の充実強化、(5)組合消防本部の体質改善を災害復旧事業や地域防災計画等の中に盛り込むよう提言を行った。なお、現地調査は被災から4カ月後の1993年11月及び1年後の1994年7月に奥尻町役場や奥尻消防署などの防災行政機関において実施した。
著者
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