8. 問われる水道水質の安全性 : 汚濁の進行と突発事故について
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概要
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日本における近代水道は、明治時代に各地で蔓延した水系伝染病を防止することを目的とした衛生施設としてスタートしたが、今日の高度都市社会の中においても、水処理(浄水処理)、給水の仕組み共、基本的には100年前と変わらない技術とシステムのもとに運営されている。しかし、環境の激しい変化の中で、水道事業は主として水質問題において次第に行き詰まりを見せており、大幅なシステムの変更を含む新たな対応に迫られている。その第一は水源とする河川・湖沼や地下水の汚濁に水道の浄水処理が対応できなくなりつつある事、第二は有害物質が河川に流出する突発的な汚染事故のレベル・内容がかわりつつある事の二点である。1.水源水質の汚濁の進行 極めて微風の化学物質等が浄水処理工程で除去されないまま水道水中に残存していたり、浄水処理工程で新たな有機化合物等が生成されたりしており、それら物質が人間の健康に悪い影響を及ぼす、又は及ぼす可能性のあることが明らかにされつつある。水道水質への危惧は、水道水に異臭味が発生し、利用者に不快感を与えていることと一体で指摘され、住民の水道水質への不信感もつのる一方である。マスコミのセンセーショナルな取り上げ方が、一層不信を煽り立てているが、物質量が接種する飲料水中一億分の一、あるいは一兆分の一といった超微量のレベルで毒性を論じなければならない分野であり、ADI(一日許容摂取量)の根拠も明確でない(というより決めようがないというのが実態)という様に思われる。こういう有り様をどう評価すべきかを考察し、将来あるべき水道システムを時間をかけて探っていきたい。2.水質汚染事故 上流に多くの人が住み、活発な産業活動が行われているところから取水得ないせざるをえない今日、水質汚染事故の影響は免れ得ないし、何度かの苦い教訓を踏まえて、ハード面でもソフト面でも対策は充実してきてはいる。しかし、一般に水質汚染事故は「平常時」に突発的に起こるものだという様に決め込んでいるようなところがある。一方、地震対策としては施設の耐震化や応急給水についてはかなり対策が講じられてきてはいるが、そういう「緊急時」には突発的な汚染事故は起こらないと楽観しているかのようで、震災時に上流から有害物質が一挙に流出してくることを想定した研究や対策は、これまでのところ見受けられない。震災対策に汚染事故は組み入れられるべきであるし、この問題と前述の水質汚濁の進行が一体不可分で進んでいることを述べておきたい。
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