ホームブリーチとオフィスブリーチにおける漂白作用の比較
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概要
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生活歯の漂白は,患者自身が行うホームブリーチと歯科医の管理下で行うオフィスブリーチに大別される.臨床において,オフィスブリーチを行ったエナメル質表面は,不透明な白さになりやすい一方,ホームブリーチを行ったエナメル質表面は,透明感のある自然な白さが得られるとの報告がある.この理由として,著者は,オフィスブリーチが主にエナメル質や象牙質表層に限局した漂白作用をもつのに対し,ホームブリーチは象牙質深層まで漂白作用を発揮すると考えた.歯の表面の見え方には,色調,透過性,表面の光沢性,光拡散性,蛍光性などの因子すべてが相互に影響し合うといわれている.本実験では,漂白後の外観の変化に最もかかわる因子と考えられる色調(CIEのL*a*b*値)から,白さ(W)と白さの差(ΔW)を求め,評価することとした.そして,オフィスブリーチによるWの増加量はエナメル質や象牙質表層では大きく象牙質深層で小さい一方,ホームブリーチによるWの増加量は象牙質深層まで大きく,エナメル質表面から象牙質深層に向かってΔWが変化する傾向は,ホームブリーチとオフィスブリーチで異なる,という仮説を立て,両者を比較検討することとした.18本のヒト抜去小臼歯を切断面に歯髄腔が露出しないよう,頬舌方向に切断し,厚さ2.45±0.05mmの試片を作製した.漂白は,頬舌側どちらか一方のエナメル質表面に対して行った.半数の試片(n=9)には,10%過酸化尿素含有のホームブリーチ剤(ハイライトシェードアップ,松風)を用いた.約37℃,約100%湿度中に6時間放置して,1回の漂白とし,1日1回,2週間と4週間漂白を行った.残り半数の試片(n=9)は,35%過酸化水素含有のオフィスブリーチ剤(松風ハイライト,松風)をメーカー指示どおりに用いた.漂白手順は1回の漂白につき3度繰り返し,中1日あけ,計5回漂白を行った.漂白期間中,全試片に34cmH_2Oの静水圧を加え,歯髄内圧を再現した.漂白前後の測色には,光電色彩計を用い,エナメル質2点,象牙質4点について,CIEのL*a*b*値を求め,これらの値から算出したWより,漂白前後の白さの差(ΔW)を求めた.漂白前後の試片をスキャナーで取り込み,漂白前後のΔWを求め,さらに漂白前後のWとΔWの等高線グラフを得た.色彩計とスキャナーによるデータは,それぞれにつき,二元配置分散分析とTukeyの多重比較にて統計処理を行った(有意水準5%).色彩計とスキャナーによるデータについて,二元配置分散分析を行った結果,エナメル質表面からの深さと漂白方法の因子間に,交互作用は認められなかったことから,エナメル質表面から象牙質深層に向かってΔWが変化する傾向は,2週間と4週間のホームブリーチ,およびオフィスブリーチで異なるとはいえなかった.WとΔWの等高線グラフから,漂白前とホームブリーチ4週間後,また漂白前とオフィスブリーチ後の白く変化した部位の範囲やΔWの値は近似していた.この結果から,今回の実験設定では,オフィスブリーチによるWの増加量はエナメル質や象牙質表層では大きく象牙質深層で小さい一方,ホームブリーチによるWの増加量は象牙質深層まで大きく,エナメル質表面から象牙質深層に向かってΔWが変化する傾向は,ホームブリーチとオフィスブリーチで異なる,という仮説は棄却された.つまり,オフィスブリーチが主にエナメル質や象牙質表層に限局した漂白作用をもつのに対し,ホームブリーチは象牙質深層まで漂白作用を発揮するという所見は得られなかった.
- 2007-10-31