初期う蝕下の狭窄した象牙細管における細管内容液の外向き流の変化が細菌性LPSの歯髄内拡散に及ぼす影響

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目的:エナメル質が失われると,歯髄は象牙細管を介して物理学的,化学的,細菌学的刺激に曝される.象牙細管を介したこうした刺激物の歯髄内侵入は,象牙細管内容液の外向き流(OF)によって抑制されている.われわれは以前のin vitroの研究から,健全象牙質(ID)と脱灰象牙質(DD)両方で,細菌性リポ多糖(LPS)の拡散が0近くまで減少することを報告した.しかし,in vivoではLPSが露出象牙質下の歯髄から検出される.本研究で,われわれは初期う蝕下の象牙質(ECD)を介した水力学的コンダクタンス(hydraulic conductance, Lp)とLPS拡散の変化をIDと比較検討した.材料と方法:6個のIDディスクと11個のECDディスクをヒト新鮮抜去歯(第三大臼歯)の歯冠から作製し,各ディスクのLpを水平に置いたスプリットチャンバー装置を用いて計測した.模擬的歯髄組織圧(1.47kPa)によってOFを生じた.なお,11個のECDディスクのうち5個は実験前にLPSが検出されたので廃棄した.外向き流のある群(OF)とない群(NF)において,それぞれIDディスクとECDディスクを介したLPS拡散を,実験開始0,1,4,8時間後に計測(各群ともn=3)し,比較検討した.結果:ECDのLpはIDより有意に小さかった(independent t-test, p<0.001).また,拡散したLPS量は,実験開始からの経過時間に関係な<,ID-NF>ECD-NF>ECD-OF>ID-OF(two-factor ANOVA, p<0.001)の順であった.OFはLPSの拡散量をECD群で1/10に,ID群で1/10^4〜10^5に減少させた.この結果から,OFによるLPS拡散の減少はECDよりもIDの方で著しかったことがわかる.また,LPSが11個中6個のECDディスクから検出されなかったことから,LPSの侵入は象牙細管の機能的直径の減少を引き起こさない可能性が示唆された.象牙細管内容液の動水力学的移動は象牙芽細胞膜の変形を起こしうるが,これが象牙細管の機能的直径を減少させる引き金となるかもしれない.結論:う蝕はコラーゲン繊維の崩壊を伴う硬組織の脱灰という単純なプロセスではなく,組織破壊が防御-修復機構と共存する,より動的な変化である.すなわち,歯髄側象牙質で象牙細管の機能的直径が減少することによる外向きろ過率の低下を生じつつ,同時にその外層象牙質では脱灰による拡散の増加が起こりうる.こうした防御機構の破綻は歯髄へのLPS新入を招くと考えられる.象牙細管が完全に閉塞されるか無細管象牙質が形成されるまで,あるいは逆に歯髄が壊死するまで,歯髄の防御機構と刺激物の歯髄侵入との競合が続くことになる.
2007-02-28

初期う蝕下の狭窄した象牙細管における細管内容液の外向き流の変化が細菌性LPSの歯髄内拡散に及ぼす影響

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