無症状胃がんと有症状胃がんの臨床病理学的検討
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概要
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胃がんは,その発見経緯から,無症状の時期に検診や外来でのスクリーニング検査で発見される無症状胃がん(asymptomatic gastric cancer:AGC)と症状を経緯にして発見される有症状胃がん(symptomatic gastric cancer:SGC)の2つに分類される.胃がん死亡を減少させるための診断戦略を考える際,両者の臨床病理学的特徴や予後を分析することは重要である.従来,外科切除例を対象として,両者を検討した報告はみれるが,胃がん全体を対象とした報告はみられない.そこで,今回,外科切除例以外も含め,全ての胃がんを対象にし,両者の臨床病理学的特徴と予後について検討した.対象は1997年1月から1999年12月まで,厚生連長岡中央綜合病院病歴室に登録された胃がん562例である.胃がん発見時の症状の有無は診療録の記載に拠って判定した.臨床病理学的特徴は,切除胃の病理学的所見,術中肉眼所見,胃内視鏡及び生検所見,胃X線所見,CT所見,超音波所見などに拠って判定した.生存率は治療のための入院日を起算日とし,これより5年経過後の生存の有無,死亡の場合はその年月日及び原病死か否かを追跡調査し算出した.AGCとSGCの頻度はそれぞれ,239例,323例であった.AGCは,SGCに比べ,男性の割合,早期がん率,検診発見率,内視鏡的切除率,手術例での治癒切除率,肉眼型が0型の割合,組織学的に分化型の割合,stageIの割合が有意に高かった.一方,SGCは,腫瘍の広範な進展のため化学療法や支持療法のみになった割合,肉眼型が2,3,4型の割合,腫瘍が胃全体を占める割合,stageII,III,IVの割合が有意に高かった.全死因を含む5年生存率は,AGC83.3%,SGC41.2%であり,AGCで有意に高かった.進行度別の5年生存率は,早期がんではAGC90.1%,SGC83.7%であり有意差はみられなかったが,進行がんではそれぞれ,38.7%,22.7%でありAGCで有意に高かった.SGCはAGCに比べ臨床病理学的に進行したものが多く,また,対象全体の40.0%を占めていたSGC進行がんの5年生存率が22.7%と低いことを考えると,胃がん死亡を減少させるためには,無症状のうちに検診またはスクリーニング検査を行い,胃がんを発見することが重要と考えられた.
- 新潟大学の論文
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