イーヴリン・ウォー著「ブライズヘッド再訪」における宗教的構成の一考察(荒井聰子教授記念号)
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概要
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1945年に出版された「ブライズヘッド再訪」は、1923年から第2次世界大戦中までを時代背景として、英国カトリック貴族一家の姿を、家族と関わりの深かった友人の目を通して描いたものである。この作品は、すでに風刺作家として名を成していた作者が、ジェームス・ジョイスの時代以降の現代小説家たちに欠けている視点を回復するという意図のもとに、「神との関係において人間を描く」事を自らの課題として発表した、カトリック作家イーヴリン・ウォーの第一作である。また、作者の真意とは関係なく、イギリス上流社会を背景とする華麗な恋愛小説として人気を博した作品でもある。他にも神の恩寵をテーマとしたカトリック作家の小説は多いが、ウォーの場合、主人公を含む人物たちが各人各様に生きて関係を結んだ、一見混沌とした人間模様の中に神の導きの手を描きこみ、人や事物のそれぞれに恩寵が働いて歴史の中に固有の役割を果たさせて行く様を描こうとした。当然のこととして神を視野に入れた小説への評価はさまざまであったが、ウォー個人としては画期的野心作であり、技術的な不完全さや欠点は十分に認めながらも、「筋立てとしては素晴らしい」という自己評価を変えることはなかった。ここまで作者の思い入れの深かった試みの形を、この小説の宗数的構想として抽出し、個々の人生と、その組み合わせとなる全体的構想の上に作者の意図がどのように具現されているのかを検証してみたいと思う。
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