日本産スカシバガ科の蛹(鱗翅目)
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概要
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日本産スカシバガ科11属19種の蛹を記載,図示し,これに基づく系統分類を行った.これらの材料は何れも野外で採集された幼虫または蛹を名城大学農学部動物学研究室において飼育し,得られた蛹を液浸標本としたものである.この材料に基づき本科の系統分類を試みた結果,Puhringer and Kallies(2004)の示した世界のスカシバガ科の暫定目録における成虫の分類体系と次の点を除き極めてよく一致することがわかった.異なる点は1.Synanthedonを独立の族Synanthedoniniに含めずSesiiniの属としたこと.2.ToleriaをCissuvorini族に入れず,Paranthrenini族に含めたこと.このToleria romanovi (Leech)の蛹は極めて特異なもので,第1腹節に微棘列を有する点を除くとNokona pernix (Leech)の蛹と殆んど区別出来ない程である.Nokona属は幼虫がブドウ科を食害するものとアカネ科の茎に潜るものとでは形態的にかなりの差異が認められるので,本文では互いに別亜属とし後者に対し新たに亜属Aritasesiaを設けることとした.スカシバガの蛹の頭部では前頭(時には大腮も)を囲むようにごつごつとした隆起線が認められる種が多いが,これは他の科の蛹には認められない特異な形態である.また尾端の形状は原始的で,蛹化に際し幼虫の肛上板と尾脚とが一体となって変態しているため,尾端の背方部分はハマキガ科以上の高等な鱗翅類にみられるように大きくはなく,両部分が互いに頭尾方ではなく腹背方に位置している.従って尾突起(cremaster)の形成はみられないが,シャクガ科などにみられる側溝(lateral groove)に相当する,両部分を分かつ線の跡を認めることは出来る.また幾つかの種で尾端背部に粗状をした部分が認められるが,これは成虫において尾端総毛の生じる部分であろうと推定される.
- 2009-01-10
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