「P以上(ハ)Q」文の意味用法 : 話し手の論理に基づく必然性を述べる文
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概要
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漢語「以上」が従属節を作る複文「P以上(ハ)Q」文は因果関係の表現として広く使用されるものの,その用法に関しては多用される文末形式との関わりの指摘にとどまり,叙述の制限についても十分に明らかではない。本稿では,その用法と叙述の制限について次のことを明らかにした。「P以上(ハ)Q文」は,「PならばQ」という話し手の論理に基づき,従属節に判断の場として状況Pを限定し,必然の帰結であるQに対する判断(真偽,価値),意志,願望を主節に述べる文である。使用される文末の形式は多様であるが,いずれも命題Qを論理的に必然の事とし,Qに対する判断,意志,願望を述べるものである。ここに,この文の基本的機能として,話し手の論理に基づく必然性を述べることで「話し手の論理を構築する」働きを指摘することができる。両節の叙述に関しては,情報の共同性と個人性という観点から次のような制限が認められる。(1)<以上節>には,聞き手との共有を前提としない主観的な情報を述べることはできない。(2)主節部には,その必然性を述べるという性格上,否定事態を想定できないような事柄(主観的な情報,真偽が確定した事柄)を命題Qとして述べることはできない。(3)命題Qが動きの成立の必然性を述べる場合には,動き成立の段階を客観的に指定する必要がある。こうした制限は,「P以上(ハ)Q」文が論理を構築する文であり,その要素は常に聞き手との共有を前提とした客観的な情報でなくてはならないことを示すものである。
- 同志社大学の論文
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