中部日本,北部フォッサ・マグナの新第三系礫岩と新生代地史
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概要
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北部フォッサマグナは,中部日本北部において,日本列島の地質構造単位として,きわめて重要な意義をもっている地域である,海退期に伴う前期中新世以降の新生代の地層が広く分布しており,全層にわたって礫岩層がよく発達している.しかし,この地域の堆積物,特に礫岩について,全域的に,かつ長い地質時代を通して,系統的に研究されたものはない.そこで,筆老は堆積物中の礫岩の礫を用いて,後背地と堆積盆地との間の構造運動を考察しようと試みた.礫岩の測定方法には種々あるが,この研究の目的から考えて,結果的には,長径10mm以上の礫を対象とする便宜的な方法を設定した.調査地点は104個所におよび,礫の岩石種・礫径・円磨度・風化の程度・膠結物,礫岩層中の最大礫・被度・淘汰度・走向傾斜・堆積構造について調査した,これらの結果を検討し,礫岩の性質からみた北部フォッサ・マグナの地史的発達を考察した.すなわち,後背地からの礫の供給と,堆積地域との関係は,古い時代から新しい方へ,次の各段階に区分することができる.1.南方の木曽西南部や,赤石山脈・伊那山脈から供給された時代.2.主として,北部フォッサ・マグナ内部の南部の内村累層から供給された時代.3.1と2の地域および西方ないし,西南方からの供給時代.4.主として,西方ないし西南方の飛騨山脈方面から供給された時代.なお,3と4では,堆積時の火山噴出物が混入し,構成礫種に特徴をつけている.このような後背地の隆起・侵食運動と,堆積物との関係の究明から,北部フォ・サ・マグナ堆積盆地の構造発達に関して従来の研究結果の裏づけをしたり,また,新しい知見を加えることができた.特に北部フォッサ・マグナ内部の中央隆起帯の発達や,糸魚川-塩尻線地帯の構造発達過程と,礫の供給状況との関係を明らかにすることに役立った.とりわけ,従来も一般的には考えられていた北部フォッサ・マグナ地域と,その西側の飛騨山脈との顕著な構造的対立の時代や運動が,中新世末から鮮新世初期,および,鮮新世末から洪積世前期であり,これが飛騨山脈の急激な隆起現象によって表現されたものであることを確認することができた.
- 1970-07-25
著者
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平林 照雄
北陽建設株式会社地質コンサルタント部
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平林 照雄
Nagano Prefecture Education Center And Instructor Of Shinshu University
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