沖縄本島におけるイボウミニナ個体群および餌資源の季節変動
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概要
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日和見的な摂食活動を行うウミニナ科のイボウミニナBatillaria zonalisについて,沖縄本島南部に位置する与根干潟における個体群および餌資源の季節変動に関する調査を2001年1月から2002年12月まで行った.この調査地ではイボウミニナは最も優占的に生息する巻貝であり,2001年,2002年とも冬の時期に密度およびバイオマスが高くなっていた.ウミニナ科のリュウキュウウミニナB. flectosiphonataやフトヘナタリ科のヘナタリCerithidea cingulataが同所的に生息していたが,それらはイボウミニナより低い密度であった.コホート解析およびベルタランフィーの成長曲線(VBGF)からイボウミニナの成長を推定したところ,1年で殻高21.0mmに達し,最大殻高31.5mmになるには9年を要すると推定された.2年間の調査において,イボウミニナは少なくとも4回加入したと考えられたが,1年齢未満の個体(殻長21.0mm未満)は先行研究よりも出現頻度が非常に低く,将来的にこの生息地におけるイボウミニナ個体群が縮小していく可能性が危惧された.イボウミニナの餌資源であるアナアオサUlva pertusaは1-4月,堆積物中のクロロフィル-a (chl-a)は4月,海水のchl-aは6月とそれぞれ異なる時期にピークがみられた.イボウミニナのバイオマスが高い時期とアナアオサの被度が高い時期は一致し,アナアオサの減少に続いてイボウミニナも減少したことから,イボウミニナの高いバイオマスはアナアオサに支えられていると考えられた.さらにアナアオサの減少後には,堆積物中のchl-aと海水中のchl-aが交互にピークを示したことなどから,このような餌資源変動の下ではイボウミニナの日和見的な摂食活動は有効な戦略であると考えられた.
- 2008-03-31
著者
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上村 了美
国交省
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上村 了美
Laboratory of Ecology and Systematics, Graduate School of Engineering and Science, University of the
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土屋 誠
Laboratory of Ecology and Systematics, Graduate School of Engineering and Science, University of the
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土屋 誠
Laboratory Of Ecology And Systematics Graduate School Of Engineering And Science University Of The R
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上村 了美
Laboratory Of Ecology And Systematics Graduate School Of Engineering And Science University Of The R
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