在宅介護における家族介護者の現状と課題 : 介護保険制度成立以前と以後の比較を通して
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概要
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本研究は,介護保険制度施行後,在宅家族介護者の介護状況がどう変わったのか。これを制度施行を基点として,制度施行前から介護を始めた集団(制度前)と制度施行後から介護を始めた集団(制度後)に分け,比較しながらその実態を明らかにし,現制度の課題を考察したものである。研究方法は,2006年6月20日から9月5日まで約3ヶ月間にかけて,認知症の人と家族の会(滋賀,京都,大阪支部)の会員として,在宅介護サービスを利用しながら,認知症高齢者を主に介護する家族介護者を対象にして行ったアンケートのデータを本研究の目的に沿って再分類,再分析した。分析方法は,SPSS,ver,15.0を利用して,度数分析,信頼度分析,クロス集計分析,t検定,一元配置分散分析,二元配置分散分析などを用いて分析した。その結果は,介護保険制度以後,介護を始めた家族介護者は制度前から介護を始めた家族介護者より,女性介護者が大きく増加した(p>0.001)。そして,制度前と比べ,制度後,自意的介護は減少した反面,他意的介護も大きく増加した(p>0.05)。他の介護状況は集団間の有意差が表れなかったが,有意差が表れなかったということは介護保険制度が家族介護者の介護状況に影響を及ぼさないことを意味する。また,介護負担は集団問の有意差が表れたのは介護時間と健康状態,介護費用の割合のみであったが,全体的に制度前2.96(標準偏差.72)より,制度後3.25(標準偏差.62)の介護負担が高く表れた。したがって,家族介護者の介護負担軽減及び「介護の社会化」の実現のため,本研究の分析結果に基づいて次の三つを課題提起したい。その三つの課題としては家族介護者の医療保障制度導入と支給限度額の廃止,介護老人福祉施設の入所に関する指針や入所基準の廃止である。
- 龍谷大学の論文
著者
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