ハンナ=アーレント・身体・アフリカ : 思想を穿(うが)つ身体
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概要
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アーレントは、ナチズムのユダヤ人迫害を逃れ、フランスでの亡命生活の後、1941年5月にアメリカへと逃れた。ナチズムをめぐる彼女の著作活動は、このアメリカで精力的におこなわれた。ナチスが、「社会的な」大きなうねりのなかで手にした加速力、これにたいする「政治力」の欠如こそが歴史的悲劇を生みだしていく歴史的諸側面を鋭い思考力を駆使して叙述したアーレントの著作は、アメリカをはじめ、世界的に評価された。しかし、1957年9月のアーカンソー州のリトルロックの公立高等学校での、黒人と白人との共学をめぐって、暴力をともなった激しい衝突が起き、これを契機に黒人と白人と教育をめぐる問題が、社会と政治をまき込んでクローズアップされることになる。アーレントは、黒人と白人の分離教育問題を政治問題としてではなく、社会的な問題とみなした。しかし時代の趨勢は、社会的なものが大きく人々の生活を覆い、問題化しているなかで、アーレントの政治論理はむしろ形骸化していた。しかも、アーレントの著作には黒人蔑視の記述が多々みられることが指摘され、リトルロックでの黒人・白人共学の論争は、アーレントの著作が内包する問題点と、黒人の社会的・歴史的存在をめぐっての新たな解釈とイムパクトをもたらした。社会的なものを直接体現する「身体」めぐって、アーレントの政治思想が穿たれていく時代の転轍の側面を考察する。
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