明治の出版物にみる食用油脂及び油脂調理について : 小説『食道楽』を中心として
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概要
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食用油脂が,日常の食生活に普及し始めたと考えられる明治期後半における,食用油脂の種類および油料理の特徴を,『食道楽』全9巻を資料として調査した。『食道楽』の著者である村井弦齋が提唱した油脂の摂取の奨めにより,種々の油脂を用いた西洋料理が掲載され,調理方法もかなり詳細に述べられていた。とりわけバターの使用頻度が高く,調理法も多彩であった。しかし,使用する油脂および食材は一般の家庭では容易に入手できないものもあり,実際に調理され食された料理は限られていたと推察された。明治期後半に出版された『食道楽』に著された調理法は,当時としては時期尚早の感は否定できないが,バターをはじめとする種々の食用油脂を数多く紹介し,食用油脂の摂取を様々な調理法を用いて具体的に示したことは意義あることと考えられた。明治以降の近代において,西洋料理の調理法および食べ方が西洋料理書および婦人雑誌を通じて知識層に伝えられたことにより,以後,油脂調理が広く一般に普及し大衆化した。その一因として,『食道楽』が果たした役割は大きいものであったと言える。西洋料理の手法を用いた油脂調理の啓蒙は時代と共に進化し,油脂調理が今日の多様化した食生活に不可欠なものとなる先駆けをつくったことが分かった。
- 昭和女子大学の論文
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