相違決定の極小モデル
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概要
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ディグナーガの因の三相による論理学には相違決定(viruddhavyabhicarin)の現象が見られる.この現象について学者(古代,現代)は様々に説明するが,本稿は,これが特定の思想的立場に基づく論証に生ずる現象ではなく,因の三相による論証自体に内在する問題であることを明確にする.そのため,本稿は,因の三相の論理学を純粋に形式的な観点から見て,相違決定となるための必要条件を求めた上で,相違決定の極小例を提示し,相違決定の「発生現場」を捉える.相違決定の必要条件はまず喩体(遍充関係)に基づいて求められる.続いて,因の第二,三相の各々が喩体を論理的に含意することを証明する.第三相が喩体を含意することは基本的にJ.F.Staalのかつての証明に譲るが,第二相が喩体を含意すること-Staalが証明を試みたが,成功していない-の証明は新たに行う.また本稿は,因明で謂うところの「因同品」「宗同品」の概念を用いて第二相を定式化することによっても喩体が導出できることを示す.相違決定は喩体とは直接のかかわりはない.しかし,因の第二相・第三相が喩体を(論理的に)含意していることが上のようにして示されるから,喩体を基礎として得られた相違決定の必要条件は因の三相を推論の基礎としたときの相違決定の必要条件と考えてよい.従って,第二相・第三相,喩体のいずれを推論の基礎とするかに拘らず,本稿で得られた相違決定の必要条件は成り立つ.
- 日本印度学仏教学会の論文
- 2008-03-25
著者
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