関連性評定質的分析による逐語録研究 : その基本的な考え方と分析の実際
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概要
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逐語録研究のための関連性評定言的分析(KH法)という新たな質的研究アプローチが,その理論的検討と実践的技法とともに提起された。KH法は,以下に示す三つの方法を採用して結びつけたものである。すなわち,1)逐語録の内容をラベルとして要約することによって構造化する方法である,文化人類学者の川喜多二郎によるKJ法,2)KJ法によって得られたラベルの対応表から多次元尺度構造を見いだすための林知己夫の数量化理論,3)ラベル構造を表示するハッセ図を算出する長田博泰の形式概念解析プログラム,である。グラウンデッド・セオリー(GTA)及び解釈学的現象学的分析(IPA)と比較した際のKH法の特徴は次の通りである。1)KH法はKJ法を再構成して数量的及び論理的な構造分析を可能とすることによって,連語録をより適切に解釈できるようにしたこと。2)複数の連語録のそれぞれの話者について外的変数が得られるならば,カテゴリカル重回帰・カテゴリカル判別分析である林の数量化理論(I類・II類)を用いて分析可能であるという,質的および数量的分析の統合化を行っていること。3)逐語録をおおむね文章単位に切り出してカード化し,内容に基づく関連性の評価によってカードグループを構成する。そうしたグループ構成がオートポイエティック(自己組織化的)であることと,抽象度を上げないラベル付与が,GTA/IPAの抽象度の高いコーディング方法とは異なっていること,である。KJ法およびKH法の自己組織的な過程と言語相対性仮説の観点から見たその文化的特性,及び,類と種の間の比喩である提喩を用いるラベル付与過程の重要性についての議論が行われた。
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