貨幣需要, 利子率, および時間選好率
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概要
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本稿は,ニーハンス〔1978〕やクラモン〔1985〕の一般均衡理論を基礎に,多数期間分析によって貨幣の働きと消費需要について考察し,現物所得や貨幣残高のみではなく,貨幣残高の利子率および時間選好率も貨幣需要に影響することを示し,貨幣需要関数の導出を考察した。取引主体によって, 時間選好率が貨幣保有費用と見なされ, 貨幣で購買力が将来に持ち越されるとき,時間選好率が上昇すると,将来に持ち越される貨幣数量は減少し,取引主体の貨幣需要は減少する。また,本稿は,効用関数に貨幣を含まない枠組みでソルベンシー条件あるいは貨幣残高の利子率や時間選好率が組み込まれた貨幣経済において,貨幣需要が正になるという結論を得た。この点で,本稿はパティンキン〔1965〕,ハーン〔1965〕やサミュエルソン〔1947,1968〕の貨幣理論とは異なる。それでも,新古典派の貨幣理論をパティンキンやサミュエルソンの理論から本稿のように効用関数に貨幣を含まない理論に拡張する場合には,貨幣が交換の媒介手段であり,将来の購買力の源泉(貨幣の価値貯蔵手段としての役割)である性質に着目する必要がある。
- 2009-03-12
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