谷崎潤一郎の説話様式 : 昭和期始動の装置を論ず(乙葉弘先生 渡辺三男先生退任記念)
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概要
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谷崎関西昭和初年代の作風変化が饒舌録(昭和2)あたりに鍵を宿し、説話的手法に繋って行くらしいという推定は、谷崎研究史の上では旧聞に属する。しかし、〔一〕作風修正の動機は何か、〔二〕昭和期始動の体勢とは何か、という内的機制に絡めた考察においては尚未検討な分野が多いと思われる。本稿は饒舌録中の記事で大正末年頃谷崎が読み漁った書目の中に幾つかの技法的特性を指摘し、検閲の監視を忌避する動機と目的とのために、それらを一つの創作体勢(二元的方式(システム)から一装置へ)として作り上げて行った過程を追跡し、いわゆる「古典回帰」の秘密解明に一鄙見を投ずるとともに、いかなる意味において説話的であったのかを論じてみたいと思う。
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