生物における「選択の自由」 : 実験的研究の方法と展開
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
特定場面における有機体の行動は,一般に多くの可能な行動の中から選択されたものである。このような選択が自由意志によってなされるのか,あるいは決定論によるものかは,古来,哲学的議論の対象であった。一方,「選択の自由」の概念は,経験論的な立場からは,選択肢の有効性の問題として取り扱うことができる。すなわち,自由な選択は,環境内に当該の有機体にとって有効な複数の選択肢が存在することによって可能になるからである。従って,もし環境内に有効な選択肢が1つしかなければ,有機体は「選択の自由」を持っておらず,強制的な選択を迫まられることになる。このように,環境内に2つの選択場面-「自由な選択場面(free-choice)」と「強制的な選択場面(forced-choice)」-があり,さらにそれらのいずれかを有機体が「自由に」選択することができるとしたら,どのようなことがおこるであろうか。自由選択場面は強制選択場面よりも好まれるであろうか。もしそうだとしたら,このような選好(preference)は有機体にとってどのような意味を持っているのであろうか。また,このような選好は個体発生-生誕後,環境との相互作用により発達してきたもの-によるものであろうか,あるいは系統発生-有機体の生存にとって進化論的な意味がある-によるものであろうか。さらに,これらの「自由」にかかわる問題は,人間のみに限定されるものであろうか,あるいは,他の生物にも該当するのであろうか。本稿では,2つの刺激場面-「自由選択」場面対「強制選択」場面-間の選好の問題がどのように研究されうるかを,実験的行動分析の立場からなされたハトの実験を中心に概観し,あわせて筆者らによる最近のデータを紹介する。
- 駒澤大学の論文
著者
関連論文
- ハトによる「線画顔刺激」の年齢弁別
- 系列学習における順序機能の転移
- PII-47 日本語発話の語尾決定における刺激性制御 : 視覚刺激観察距離の効果(ポスター発表II)
- ハトによる「線画顔刺激」の年齢弁別
- P4-02 ハトにおける絶対的・相対的弁別学習後の般化勾配(ポスター発表4)
- P2-39 ハトにおける数量の弁別と移調(ポスター発表2)
- PII-43 擬似的見本合わせ課題における見本刺激の制御機能 : 見本刺激の有無が刺激選択に与える影響(ポスター発表II)
- 企画趣旨(行動変動性の実験研究とその応用可能性,自主企画シンポジウム)
- 信念行動の実験的分析 : Time Scheduleによる反応形成
- P1-17 強化スケジュールの反応遂行に及ぼす情報の効果 : 回数情報と時間情報の選択利用(ポスター発表1)
- P2-05 逆向訓練が系列置換学習に及ぼす影響(ポスター発表2)
- P2-42 系列置換学習に及ぼす訓練順序の効果(ポスター発表2)
- P2-03 系列置換学習に及ぼす新系列先行提示の効果(ポスター発表2)
- P4-07 擬似的条件性弁別手続きにおける条件性刺激の機能(ポスター発表4)
- P2-17 条件性弁別課題の感受性に及ぼす教示の効果(ポスター発表2)
- P1-18 反応-反応関係の成立に及ぼす空間的特性の影響(ポスター発表1)
- P1-6 確率的条件性弁別における選択反応 : 強化確率と訓練手続きの操作を中心として(ポスター発表1)
- 人間の選択行動における先行経験と異種選好 : VRスケジュールがもたらす変動性(行動変動性の実験研究とその応用可能性)
- P2-07 情報の信頼度とコストが情報選択行動に及ぼす効果(ポスター発表2)
- P1-10 オートクリティックとしての"は"と"が"の制御変数の分析(2)(ポスター発表1)
- P1-09 多元スケジュールにおける文字刺激の機能(ポスター発表1)
- P1-06 多肢選択肢の提示法が選択行動に及ぼす効果(ポスター発表1)
- P1-20 オートクリティックとしての"は"と"が"の制御変数の分析(ポスター発表1)
- 他者の視線の判別(研究発表D,VI.第17回大会発表要旨)
- 生物における「選択の自由」 : 実験的研究の方法と展開
- 禅の心理学的分析 : 自覚系に関する試論
- 情緒的問題解決における先行経験の効果
- ヒトにおけるタイムアウト回避行動の獲得と消去(日本基礎心理学会第31回大会,大会発表要旨)