第1章 東アジア企業におけるマーケティング環境と行動の実証分析(第II部 アンケート調査結果に見る東アジア諸国のマーケティング環境と行動,東アジア諸国のマーケティングと産業特性に関する研究特集号)
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概要
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東アジア地域の企業は,一見どの企業も同じような行動を取っているかのように見える。しかし,東アジアにおける企業のマーケティング行動や経営行動は,東アジア地域特有の要因や地域性から生じていると考えられる。そこで本研究では,東アジアの中国,台湾,及び韓国企業を例に取りながら,各国のマーケティング行動が,各国の社会環境・文化・価値観・法律・経済などの要因に基づいて採られていることを明らかにする。それは,各企業の所属国がどのような要因によって説明あるいは判別できるかを具体的に明らかにすることに他ならない。しかし残念ながら,本研究のような研究は従前ほとんど見られず,本研究は東アジアのマーケティング行動の実態を実証しようと試みる研究だけでなく,国別企業の背景を評価し,戦略や戦術を新たに立案する企業にとっても重要な手掛かりを与えてくれると考えられる。そこで,本研究では上記研究目的を検証するために中国,台湾,韓国及び香港において企業アンケート調査を実施し,マーケティング環境と行動の実態について先ずクロス集計をすることでそれを明らかにした。各国でのアンケート調査は,現地企業だけでなく,概念の偏りを避けるために日系企業にも行った。その総数は450サンプルとなった。アンケートの内容は, (1)社会・文化・習慣・価値,(2)従業員・労働者,(3)企業行動・企業ポリシー,(4)法秩序・社会秩序,(5)マーケティング・リサーチ,(6)製品計画・研究開発,(7)販売促進,(8)流通経路の分野等の8分野45変数に渡って調査を行った。次いで,本アンケート調査のデータベースに基づいて,各国の企業行動を説明するために多項ロジットモデルを用い,社会的環境・文化・価値観・経済・法律等の要因がどのように関わっているかにつき分析の焦点をあて,検証を試みた。つまり,本研究では香港を除く3ケ国(中国,台湾,韓国)において,サンプルデータの企業が特定国の企業になるか否かを,説明変数群により決定することであった。本研究では仮説において予想された変数と完全には一数しなかったものが若干みられたが,基本的には一致して統計的に有意となった。主要な結論は以下の通りである。本研究では,「社会秩序の維持」,「宗教上の柔軟性」,「従業員像」,「経営の短期目標」,「市場範囲及び市場指向」,「企業と行政(役所)との関係」,「法秩序のニーズ」,「官僚・公務員の社会的権威」,「役所の市場への役割」,「ルール違反者に対する制裁」,「法の体系」,「得意とする技術革新の分野」,「製品形態の技術革新」,「メーカのプロモーション戦略」,「広告の訴求内容」,「中間業者の多さ」,「流通経路の管理者」などの変数が統計的に有意となり,同時に因果符号もほぼ一致した。なお,新たな分析視点として,香港を除いた3ヶ国のマーケティング行動を空間上の布置する近似性の研究は,次回の研究課題とする。
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