日英語の違いが学習者の照応表現の理解に与える影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は日英語の代名詞の性質の違いが,日本人学習者の先行詞理解に与える影響を明らかにすることを目的とした実証研究である。数ある日英語の代名詞の性質の違いの中から,本研究ではtheyが指す先行詞の有生性に焦点を当てた。theyという代名詞は,有生物と無生物の両方を指すことができる。一方日本語では「彼ら」「それら」のように異なる言葉を使っている。この事実に加えて,日本人学習者にとって無生物を指すtheyは有生物を指すtheyよりもなじみの薄いものであり,日本語では「それら」という言葉は「彼ら」と比べて使用頻度が低い。本研究では高校生145人を対象に,英文パッセージ中の代名詞theyあるいはthemの先行詞を答えさせるタスクを与え,有生物を指す場合と無生物を指す場合で,学習者の理解度に差が見られるかを検証した。その結果,本研究で対象とした高校生の間では無生物を指すthey/themの方が,先行詞理解が難しいということがわかった。ただし,理解を難しくさせている原因は,先行詞の有生性だけでなく,日英語の単複の概念の違いでもあるのではないかという可能性が残った。