雌成犬近位尿道における自律神経薬に対する反応形式と筋構築からみた尿道機能

概要

論文の詳細を見る
近位尿道の機能を解明するため,雌成犬の尿道筋切片を用いて周方向および縦方向の張力変化を定量的に解析し,かつ近位尿道の筋構築を組織学的に観察した.交感神経作働薬に対して,周方向および縦方向切片は,α_1-receotorを介する収縮反応と,β-receotorを介する弛緩反応を示した.この収縮反応と弛緩反応は,周方向切片が縦方向切片より有意に強く,明らかな差が認められた.これは筋構築上,近位尿道の輪状筋が縦走筋より発達していることより,receotorの数ではなく,筋量の差によるものと考えられた.acetylcholineは縦方向切片に対してmuscarinic receotorを介する収縮反応を示したが,これは近位尿道に及んでいる排尿筋成分が収縮したものである.acetylcholineの周方向切片に対する反応は縦方向切片と全く異なり,小さな収縮に続く大きな弛緩反応を示した.これはacetvlcholineのnicotinic actionによりshort adrenergic neuronが興奮して起きたものと解される.また,弛緩反応は尿道固有輪状筋の存在部位で起こることより,short adrenergic neuronは輪状筋に分布して排尿時の尿道弛緩反応に関与していると考えられる.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1987-05-20