知的障害者の生涯発達と生涯学習保障2(自主シンポジウム8,日本特殊教育学会第44回大会シンポジウム報告)
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概要
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本シンポジウムでは、各地で展開されている大学を活用した知的障害者の生涯学習の取り組みを交流するとともに、次のような課題意識を共有できる場にしたいと考えた。1)障害のある当事者の学習ニーズは何か、それはどのような権利に根ざしているか2)そこでの「学び」とはどのようなものであるのか、「学び」の効果はいかなるものか3)この取り組みを広げ、発展させ、定着させていくためには何が必要かこれらの課題共有のために、5人の話題提供者には、それぞれの実践をもとに、次のような諸点に重点を置いて語っていただいた。安原氏は、おもに1)と2)にかかわって、障害の比較的重い人にとってオープンカレッジはどのような意義があるのか、当事者の学習ニーズとそれに応える学習内容展開について語った。この中で、主催側の想定外であった参加者の感想に「勉強することが楽しいと発見できた」「同世代と交流できた」という二つのキーワードが重要であったことを強調した。松永氏は、おもに1)と2)にかかわって、障害の比較的軽い人たちの学習ニーズと、それに応える地域に根ざした学習内容構成の工夫や学習支援方法の特徴について報告。軽度の人たちは、「結婚したい」「ファッションセンスを高めたい」「お金を貯めたい」など社会参加とノーマライゼーションへのニーズを実現するために学んでいるということが確かめられた。津田氏は、おもに1)と3)にかかわって、成人期当事者の自己表現とは何か、それを受け止める大学人・周囲の変容(・がないことも含めて)から「共に生きる」(インクルーシヴな)社会へのハードルは何か、超えるためのヒントは何か、と問題提起し、神戸大サテライトとして開設した常設のインクルーシヴな居場所「のびやかスペースあーち」という新たな実践についても報告した。菅野氏は、おもに2)にかかわって、学習展開の工夫や、当事者と支援者との関係性の変化などから、公開講座における「学び」とはどのようなものであるのか、東京学芸大学公開講座における受講生の「学習内容定着度」「相互交渉タイプ変化」「コミュニケーション行動の機能変化」という3つの指標研究から問題提起した。國本氏は、おもに3)にかかわって、各地のオープンカレッジ等の学習展開を総括しつつ、今後の発展、定着のための課題を財政面、人的面、権利保障面の3点から提起した。3年目になる本シンポジウムは、静岡大学、東北大学、福岡学院大学などからも実践した内容や、今後取り組みたいことなどの発言があり、課題を参加者で共有できる場にできたといえる。
- 2007-01-30
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