知能障害児の反射的眼球運動と他覚的視野測定の試み
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概要
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視野内に出現する光刺激によって誘発される眼球の反射運動の発現様式を、MAが2〜10歳台にある知能障害児77人を対象として、EOG記録をもとに分析した。また、この反射運動を指標として視野測定を試みた。主な結果は以下の3点である。1.眼球の反射運動の発現様式に特徴的な3つのタイプが抽出された。すなわち、A:単純光刺激によって反射運動が高頻度に誘発される、B:刺激に一定の信号的意味が与えられると、反射運動の出現率が顕著に高まり、持続的に生起するようになる、C:その事態においても、比較的すばやく反射が抑制される傾向を示す。これら3タイプは発達レベルに対応した特徴であると考えられ、MAでいえば、ほぼ3〜5歳(A)、5〜6歳(B)、6歳後半〜7歳台(C)に相当する。2.そのような特徴を示す眼球の反射運動と、必要に応じて、言語応答、随意的固視移動を指標として、耳側方向の視野測定を試みた。その結果、全被験者についてテスト光のみえる視野の範囲を測定することができた。その際、各被験者において最も客観的で信頼性の高いと判断された指標は、MA6歳以下の場合はその80%以上が眼球の反射運動であった。また、被験者の1部(18人)に実際に周辺視野計法で視野測定を実施して、その結果と対照してみて言えることは、反射的眼球運動をその発現様式にみられる発達的特性を考慮して利用すれば、通常の方法では視野測定が困難である発達段階6歳以下の被験者でも、ほぼMA2歳台までは測定が可能になるであろう、ということである。3.このようにして得たテスト光のみえる視野の範囲のデータから、発達段階、特にMAの上昇に対応して視野も拡大するという結果を見い出した。これは、これまでの視野研究でわれわれが得た知見を支持するものである。今回のデータは、特に、方法的制約からこれまで対象としえなかったMA2〜6歳台の知能障害児56人をも含んでいるという点で、非常に意味あるものと考えられる。
- 1977-07-15
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