ホタルルシフェラーゼの化学発光色と構造 : アシル-AMP中間体アナログの化学的意義(<特集>バイオテクノロジーへの応用的戦略を踏まえたタンパク質構造解析)
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概要
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ホタルルシフェラーゼは,発光基質ルシフェリンとATPおよび分子状酸素を反応させ,高い量子収率で化学発光を触媒する酵素である.この化学発光系は,フォトンを放出するきわめて感度の高い検出法として,ATPの高感度定量や,レポーター遺伝子として今や重要な生化学ツールとなっている.その一方,ルシフェラーゼの触媒反応にはまだ謎が多い.なかでも最大の謎はルシフェラーゼに1ヵ所でもアミノ酸変異が起こると,発光色(発光波長)が劇的に変化する場合があることである.この謎に迫るため,当時の理研播磨研究所(現・京大薬学研究科)の加藤博章および中津亨両博士との共同研究で,野生型酵素と発光色が赤色に変化した変異体酵素のX線結晶構造解析を行った.その結果,発光色は,反応の遷移状態においてのみ見られる酵素活性中心のダイナミックな動きによって巧妙に制御されており,野生型酵素では,活性中心の疎水性残基が励起分子をしっかりと押さえ込むことで無駄なエネルギー損失を防ぎ,波長の短い黄緑色の光を発していることが判明した.本稿では,励起エネルギーを無駄にしないルシフェラーゼの巧妙な仕組みと,それを構遺的にとらえることを可能にした化学的アプローチや考え方を中心に解説したい.
- 2008-04-25
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