薬剤製造業における職業性アレルギー発生の量-反応関係の検討
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概要
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1)製薬工場従業員にみられた職業性薬剤アレルギーの追跡調査の結果から,抗原暴露レベルと発症率の間に量-反応関係が存在するか否かを検証し,あわせて素因のかかわりについても検討した.2)抗原は粉末状の消炎酵素剤(Bromelain,Trypsin)と抗生剤(Cephalexin,Ampicillin,Amoxycillin)であり,対象者41名のうち24名が消炎酵素剤を,全員が抗生剤の暴露を受けている.観察期間は消炎酵素剤では1970年から,抗生剤では1975年から1984年4月までとした.アレルギー発症は特殊健康診断と健康管理資料とから確認した.アレルギー素因の有無はアトピー性疾患の既往・家族歴(素因(I))と,判別分析で発症に寄与すると判別された既往・家族歴(素因(II))の二つの方法で推定した.発症率は人年法で求めた.暴露レベルは作業内容から推定した.量-反応関係は,(1)同種抗原に対する同程度の暴露濃度レベルの時の,暴露頻度レベルと発症率の関係,(2)同種抗原に対する同程度の暴露頻度レベルの時の,暴露濃度レベルと発症率の関係をみることで検討した.3)その結果,(1)対象者全体では暴露頻度レベル,暴露濃度レベルの高い群が有意に高い発症率を示すこと,(2)この関係は素因(I)を有する集団の間で特に著明にみられること,(3)素因(II)を有する集団の間では暴露頻度レベルの多い群で有意に高い発症率を示すこと,(4)素因(I)または素因(II)を有しない集団の一部で暴露頻度レベルの高い群が有意に高い発症率を示すことなどが知られた.これらの結果は抗原暴露レベルと発症率の間に量-反応関係が存在することを示唆するものと考えられた.
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 1986-03-20
著者
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