スケトウダラ卵巣の栄養成分と色素
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概要
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ベーリング海東部,カムチャッカ半島東西,北海道日本海(雄冬岬沖),太平洋(室蘭沖),オホーツク海(紋別沖)の各海域別に,卵の各成熟段階の水分,栄養成分および色素の分析,更に色素のカラムクロマトグラフィによる分別を行って,次の結果を得た。1)水分は,ベーリング海東部の卵に最も多く,西カム・東カムがこれにつぎ,北海道周辺は少ない。栄養成分と色素は,水分と逆で,北海道周辺に多く,西カム・東カムがこれにつぎ,ベーリング海東部は少ない。2)魚体の体型別には,大型魚の方が小型魚よりも,卵の水分が少なく栄養成分と色素の量が多い。成熟度別には,2-2のものが最も水分が少なく栄養成分と色素量が多い。3-0,4-0になるにつれ,水分が増えて栄養成分と色素量が減少する。3)同一海域の同一成熟度の卵巣にも,肉眼的に赤いものと白いものあるが,これらの間には,水分および栄養成分の量では差が認められず,色素(Astaxanthin)の量に差がある。4)卵の主要な2成分である水分およびタンパク質の量と比重との相関性から,次の関係式を導き出した。Gは比重,1.007は補正係数である。タンパク質(%)=X (G-1.007)水分(%)=Y (G-1.007) X=724 (700〜740) Y=1820 (1800〜1850) 5)胃内容物および幽門垂の色素を海域別および成熟度別に分析し,餌生物中のカロテノイドが消化吸収の過程で一旦幽門垂に貯えられてから,卵に移行蓄積されると推定される。6)卵の成熟度と吸収スペクトルの関係を明らかにし,後者すなわち485nm (Astaxanthin)と400nmのλmaxの相対値から卵の成熟度を求める可能性を検討した。7)卵に存在する,400nmにλmaxのある黄色色素を吟味した。亜硝酸で発色した卵をカラムクロマトグラフィで,黄色色素と血液系色素に分別し,両色素の諸性質を比較検討した。黄色色素は血液系色素とは異なる,脂溶性の色素であることを明らかにした。この色素はまだ同定できないが,カロテノイドとの強い関連性が示唆された。
- 小樽商科大学の論文
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