「鈎」を考える(大嶋隆雄教授退職記念号)
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概要
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「鈎」は一種の生活・生産手段として歴史が古く、早くも更新世後期の新人類たちはすでに獣の骨や角によって釣針を造っていた。この時期の新人類は人類進化の最終段階に至っており、かれらの手によって造られた釣針は今日のわれわれの使っている金属製の釣針と外観の上ではさほど差がない。この点については全世界範囲で発掘された出土品中の釣針が立拠している。しかし、実際、これはまだ最初の「鈎」と言えない(道具としては言えるかもしれないが)。人類の先祖たちは生存のため、植物採取、漁撈、狩猟の中で木に登ったり魚を捕ったり棒切れを握ったりすることがどうしても必要だったが、その時の手が「鈎」状を呈していた。後になって植物採取の範囲が拡大し、社会が進歩・発展する中で、人類は手よりももっと便利で鋭利な「鈎」および鈎状の道具を求め、手の効能上の欠点を補うことが必要となってきた。こうした過程の中で、「鈎」の機能がたえず認識され、「鈎」自身もしだいに完壁化されてきた。この意味で言うと「鈎」は手の発展と延長であり、手から「鈎」への変化は人類のバイオニックス領域における最初の成果だと評価しても過言ではない。したがって、「鈎」に対する研究は歴史の研究であり、人類自身の研究でもあると言えよう。
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