多変量解析による地域構造の研究
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概要
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地域区分のやり方については,伝統的に等質地域をとりあげるものと結節地域をとりあげるものとがある。しかし,Berryは,この両者はそれぞれ互に他方の原因であり結果であるので,この2つの地域概念を1本にまとめることができると提案した。この論文では,日本について12地域のデータをもとに,多変量解析を用いて体系的に3つの地域構造概念を明らかにすることにした。等質地域としては,8種のデータについて因子分析を行い,第1因子(経済的,都会的要因)及び第2因子(文化性,成長性)の2つの因子を抽出し,因子得点にもとづいてクラスター分析を行った。その結果,関東臨海(東京)は,他の地域とは,かけはなれた特性をもった地域であることが明らかになった。第1因子は,強い説明力をもった因子であるが第2因子の解釈はかなり不明である。結節地域としては,12地域間の流動に関する8種のデータを用い,これらの正方行列に,「直接因子分析法」を適用して情報の集約を行い抽出された因子ごとに対応する結節地域を図示するものとした。また,8種の流動データについて,因子分析を適用し,2大フロー群があることを発見した。ひとつは,労働力の移動のフロー群であり,もうひとつは,物資や短期旅行のフロー群である。商業取引や大学進学は,この2つのフロー群の中間の性格をもっている。結節地域としては,東日本と西日本の2群があるほか,東西を結ぶ大きなフローでこの2群が結ばれており,又,西南日本や,東北日本にローカルな結びつきが認められた。遠隔地と中心地を結ぶ労働移動フローも認められた。最後に,Berryの方法論にならい正準相関分析により,等質地域の研究で抽出した2因子と結節地域の研究に使用したフローデータから抽出した2因子間との関連を調べた。その結果,全体として,2個の因子群の間には高い相関があり,Berryの主張が裏付けられた。また2個ずつの因子の間にもそれぞれ1対1の相関が認められたが,相関係数は高くなかった。これは等質地域を区分するのに第1因子が圧倒的な説明力をもち,第2因子の存在があいまいになっていることにも由来するとみられる。正準相関分析の結果を図示すると,第1正準得点からは,東西2ブロックと東海地方と遠隔地との結びつきが認められ,第2正準得点からは,東京と京阪神から全国への影響力が認められた。従って日本の地域構造としては,東京,京阪神を中心とする東西の2ブロックの存在とともに,東京,京阪神がそれぞれ,全国的中心機能をもっている重層構造をなしていること,各遠隔地は,中心地域に強い結びつきをもっていること等が判った。また,主に労働力の移動が,東西2ブロック構造と共に遠隔地流動に対応していることも認められた。
- 愛知学泉大学の論文