政治参加の計量分析 : 政治的動員の構造
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概要
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合理的選択理論においては,選挙での市民の行動は政党・政治家の提示する政策の期待効用差を効用を計算し行動する。しかしながら,多くの理論的分析の結論としてはオルソン問題と同様の結論に帰結し,投票する人は少なくなってしまうのである。では,この功利主義的モデルと現実の市民の参加行動の違いはどこに求められるのであろうか。このオルソン問題の解決策としては,参加に対する報酬,強制的動員などが考えられる。しかし,現実には報酬や強制的動員は存在しているとは考え難いが,Obershall (1978)のいう緩やかな連帯からくる動員の可能性はある。選挙における動員は基本的には民主主義の理念に反するものである。しかし,多くの経験的分析からは選挙における動員の可能性は,日本だけでなく欧米の研究事例からもみることができる。本報告は,従来の合理的投票参加理論に新たに動員という分析視覚を付与することにより,資源動員路の枠組みを踏まえて,投票参加行動おける動員の問題を分析するものである。Obershall (1978)はオルソン問題を連帯集団(社会的ネットワーク)の視点から解決を試みており,既存の集団構造が存在すれば,運動への動員コストが逓減するという議論を展開している。また,Hechter (1987)は成員が集団に依存するほど,そして成員に対するコントロールが有効なほど高まるとしている。また,近年ではColeman (1994)がSocial Capitalとして定義し,人間行動への多様な分析視覚を提供している。本稿では,これらの議論を踏まえ,選挙を個人的な選択だけでなく,その社会内部の集団による動員の競争として捉える。そして,個人の政策選好と政党投票の違いから,実際にはどのくらいの割合で動員されている可能性があるのか,そして,動員されている可能性のある人々は社会集団に属することにより,参加コストを減少させることが可能なのかを検証し,投票参加行動における動員のメカニズムを解明する。
- 愛知学泉大学の論文
著者
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