モデル生態系における安定性および周期性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文では生態系における動的性質の中で重要な二つの側面,安定性および周期性が,微分方程式系によるさまざまなモデルでもって議論されている。前半の§2と§3では,二種生物系を例にとり,種内および種間相互作用のさまざまな型によって,安定性がどのように実現されるか,あるいは周期性がどのような相互作用によて出現するかについて議論されている。そこにおける安定性の解析は定常点の近傍における局所的なものにとどまらず大域的なLyapounov関数の構成により,着目する状態空間全域にわたる安定性の解析が行われている。後半の§4では種内あるいは種間の相互作用が,その瞬間の状態によるだけではなくそれ以前の状態にもよる,いわゆる履歴の効果がある場合について議論されている。一種系および二種の生物からなる捕食・被捕食系において,履歴の効果が大きい場合や,履歴が効く時間が長い場合では周期現象が現われるという結果を得た。§5では,これまであまり解析が行われていない三種系について議論されている。そこでは,捕食者が二種類の生物を捕食する場合,その被捕食生物を個体数に比例して捕食するのではなく,より個体数の多い生物種をより多く摂食するという効果がある場合,系の安定性がより高まるという結論を得ている。もう一つの例として三種競争系において,二種競争系では出現しなかった周期解が存在する場合があることが示されている。§6では,多種生物からなる捕食被捕食系において,捕食被捕食の関係によって各々の生物種が結ばれているが,その種間関係の結ばれ方の様式によって,どのように安定性が実現されるかが議論されている。ここでは,これまで生態学者によって主張されてきた"生態系が複雑になればなるほど安定となる"ということとは逆に,種間関係の結ばれかたが複雑になると系が不安定となりやすいという,Mayが確率行列で解析して得た結果と同じ結論を得た。
- 物性研究刊行会の論文
- 1978-02-20
著者
関連論文
- 複数種相互作用系の管理についての理論的研究
- 30a-ZH-3 リポソームの形態変換の理論的解析
- リポソームの形態変換の理論的解析
- 数理モデルによる達古武沼生態系のレジームシフトの解析 (特集 釧路湿原達古武沼の自然再生に向けて)
- 湖沼における2つの藻類優占状態間でのレジームシフトに関する数理モデル (第4回生物数学の理論とその応用)
- 8. 二分岐出芽に規則性はあるか? : ヒラハコケムシの場合(動物分類学会第29回大会記事)
- 数理生態学における Sensitivity Analysis 理論発展の今後の展望(新しい生物数学の研究交流プロジェクト)
- 食物網の柔軟性と安定性との関連に対するコメント(コメント,宮地賞受賞者総説)
- 1E03 間接効果の観点から見た食物網
- The Mathematical Analysis of Life History Evolution In Plants.(Mathematical Topics in Biology)
- 生態系のシステム解析
- 生物集団の遷移(集団生物学の理論的研究,研究会報告)
- 捕食・被捕食者系の遷移 (Mathematical Topics in Biology)
- モデル生態系における安定性および周期性
- モデル生態系における安定性および周期性
- 三要素系における周期解の存在 (生物の数学)
- L-V 系における Permanence と Harvest Paradox との関連 (第8回生物数学の理論とその応用)