妊婦の人体形状変化に対応したマタニティパンツの設計
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概要
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妊婦の最も身近で快適な衣環境を提供するマタニティウェアの重要性を考え,妊娠から出産までを支援することを目的として,研究を行った.妊婦の着用実態をヒアリングと観察によって調査したところ,妊婦の多くが日常的にマタニティパンツを着用していたが,妊娠後期になるとパンツの圧迫感やずり落ちといった不快を訴えていることが分かった.また,マタニティパンツ着用時の衣服圧を測定したところ,妊婦のウエストゴム位置や腹部に高い衣服圧がかかっていることが明らかとなった.そこで,妊娠期間中の顕著な寸法変化をマタニティパンツに反映するためにはどのように身体寸法を反映させたらよいかを検討した.まず,妊婦を経時的に計測した延べ942例のマルチン計測値とシルエッター計測値を分析し,マタニティパンツの寸法適合性について検討した.その結果,妊婦の人体形状は,妊娠中期から後期へと,腹部が前方へ突出するだけではなく,前ウエスト位が高位となり,股上前後長が長くなることや,姿勢が反身化の傾向を示すことが明らかになった.最近のマタニティパンツは,変化の大きい部位に伸縮素材を利用し,脚部をタイトフィットさせることで足元の視野がよくなり,妊娠前の衣服と組み合わせてファッショナブルに装えるように構成され,多くの妊婦に受け入れられていた.しかし,伸縮する素材に頼る設計は,妊娠後期で腹部の衣服圧が高くなり,不快となることが分かった.妊婦の快適な衣環境を整備するためには,負荷の少ない伸縮素材の開発や股上前後長の寸法不足を補う必要があることが示唆された.人体形状データが設計に反映されるためには,実情に即した商品の検証と,問題点を解決するための提案が求められる.引き続き妊婦の声を設計に反映させるための研究を続けたいと考えている.
- 社団法人日本家政学会の論文
- 2007-12-15
著者
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