完全主義と不適応の関連
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概要
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完全主義的な人格特性は臨床心理学的な研究対象として扱われてきた。しかし,完全主義者には正常で適応的な人たちもおり,完全主義と心理的不適応/適応との関係について確定している知見は一部にすぎず,いまだ明らかでない点が多い。本研究では,筆者が開発した新完全主義尺度および大谷・桜井(1995)による多次元完全主義尺度と心理的不適応との関係を検討した。大学生と社会人を対象に,性別,属性(大学生・社会人)ごとの平均値を比較し,完全主義と心理的不適応側面(絶望感及び抑うつ)との相関関係を分析した。その結果,完全主義と心理的不適応要因との間にはほとんど関連がみられなかったが,大学生女性および社会人男性において社会規定的完全主義と抑うつの間に弱い正相関が認められた。クラスター分析の結果,完全主義とは関係がない心理的不適応群以外に,完全主義傾向が高い心理的不適応群の存在が示唆された。これらの結果から完全主義が不適応に陥る直接的原因ではないにしても,何らかの影響を与える可能性,さらに完全主義と不適応をつなぐ変数を探索する必要性が示唆された。